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CTの撮影

話が少し前後するが、2005年1月31日、日本獣医畜産大学に診察の予約の電話を入れた。
脳外科はとても込み合っていて、1月22日の予約になると言われた・・・。それまでアンディーの命は持つのだろうか・・・と思ったが しかたなくその日にお願いした。
でも、その当日は診察のみで CTやMRIの検査はできませんと言われた。
「その日に検査していただくには どうしたらいいのですか?」と聞いてみた。
「かかりつけのドクターから直接 連絡をいただいて
ドクターどうしで話あっていただければ すぐ検査できます」という返事だった。

ここの大学病院に予約を入れてみてと言ってくれたのはK先生。脳外科の名医と言われるO教授に診てもらったほうがいいのでは?と選んでくれた。
K先生に電話をして 大学病院で言われた事を告げた。
「わかった。22日じゃ、遅すぎるよな。私から電話しておくよ」
と言っていただいた。
あとでK先生から電話がきて「私が入れた予約も17日で
あまりにも先すぎるよ。でも仕方ないなぁ・・・。」
本当に仕方ない。順番は順番だから・・・。

この頃のアンディーはフェノバールとエルセグランの投与のみ。
眠るのは私たち夫婦のベッドの下。1日中ほとんど横になったまま。でも排泄はどうしても自分のトイレでしたいらしく オムツもはかせていたが トイレに行こうとするときは はずしてあげていた。
えらいね、アンディー。トイレはちゃんとしようと
頑張るんだから。
ご飯の時間に調子が悪いと 食べられなかったりした。立ち上がって歩いている時間が少なくなってきていた。なにかしたい時は「く〜ん、く〜ん」と鳴いて
訴えた。オムツがぬれた、トイレに行きたいなどという時。嬉しいとか 欲しいとかで吠える事は全くなくなってしまった・・・。

2005年2月3日、K先生から電話がきてCTを撮影してくれる病院を見つけたと言われた。飛び上がるくらい嬉しかった。
日本小動物医科学研究所。どこかのサイトでここの病院に行ったワンの話を読んだ記憶がある。
2月5日土曜日、午後9時になった。2週間も早く検査ができる!!本当に嬉しかった。K先生、ありがとう★
せないちごさんに報告したら、一緒に行ってくれると言ってくれた。大感謝!!

<2005年2月4日の日記より >

今日はY馬の誕生日。14年前に私が頑張った日だ
アンディーがこんな状態じゃなかったら 外食もありだったけど、我慢してもらった。

今日も状態はよくない。朝6時ごろから鳴き出した。オムツを換えてもなきやまない。薬を飲ませてもおさまらない。当然、ご飯も食べられない・・・。
その状態で家を出る。
パパが仕事から戻って もう1度ご飯をあげたがあまり食べない・・・。オムツをはかせ忘れてしまい、おしっこもウンチもお漏らし・・・。立ち上がる回数も減った。それでも立ち上がると左旋回をしながら ウロウロ。
夕飯時にはテーブルの上の料理が気になるのか 
食べたそうにする。
呼んでも反応なし。私が仕事から帰って「ただいま♪」を言っても寝たまま。
寝てる時は 生きているのか死んでるのかわからない。呼吸を思わず確かめる。

アンディー君、君の脳は一体、どうしちゃったんだ?
なんで、サボってるんだ?四肢を正しく動かしてくれ!私の声で喜んでくれ!神様、ちょっといい加減にしてくれ!!

明日の今頃は 希望が見えてるのか、絶望しているのか・・・?怖い・・・。
きっと、治療法が見つかるって信じてるんだから
その通りになってくれなきゃ、困ります!!
無事に麻酔と造影剤の注射が済みますように・・・。
そのまま、虹の橋に行ったら承知しないぞ!!
私も一緒についていっちゃうからね!!!!虹の橋まで。





2005年2月5日土曜日、午後6時半頃、せないちごさんがうちに来た。一休みしてから所沢の日本小動物医科学研究所に向った・・・。

その日のアンディーは調子がよかった。ご飯もよく食べた。私が寝てるベッドの上で 私が目を覚ましたときすでに 伏せの格好をしていた。ちょっとビックリ。ベッドに上がったくせに降りられなくなって
支えてあげて降ろしてあげた。
そういう行動をしたいという意識がある という事が
とても嬉しい。

せないちごさんと主人と私とアンディーで車に乗り込み、所沢に向った。2人の息子たちには、今のアンディーがCTを撮影するために麻酔を打つと 2度と起きない可能性がある事を説明し、覚悟しておくように言った。「頑張れ!アンディー」と2人が言ってくれた。

途中の車内。せないちごさんがいてくれて助かった。
主人と2人だけだったら、重苦しい空気のまま 一言もしゃべらず到着していたと思う。
不安な気持ちを隠すため、私はせないちごさんとずっと バカ話をして大笑いしたりしていた・・・。主人も
「こんな時に不謹慎な!」とは思わないで、私の不安な気持ちからくる行動だとわかっていてくれていた。

途中の道端に無残な姿のニャンが横たわっていた・・・。
それを見た私が、「アンディーの身代わりになって
虹の橋に行ってくれた子がいるよ・・・。お礼を言わないとね・・・。」と言った。
この子の命を無駄にしてはいけないよ、アンディー。
頑張って 一緒に帰ろうね・・・。

少し早めに着いたので、駐車場に車を停め、9時になるのを待った。アンディーは横になって動けなかった。

9時になり、受付に行ってみた。
「K先生のご紹介でお世話になる○○です」
院内は 清潔で新しくて スタッフもたくさんいらした。
少し待たされて名前を呼ばれ、診察室にアンディーを運んだ。スタッフの方も手伝ってくれた。
カルテなどはK先生のほうから、FAXとメールで届いていた。
一通り、CT撮影のしくみやら 麻酔のリスクやらの説明を受け、同意書にサインをした。
「撮影を見せていただけますか?」と聞いたら
「構わないですよ」と言ってもらえた。
「では、お預かりします」と言われ アンディーのいる診察室から出た。撮影の時は呼んでくれる。

待合室に戻り、もう1度呼ばれるのを待った。

お団子のくしを飲み込んだ可能性のある、美人なコーギーちゃんがやってきた。
かかりつけの先生に連絡したら、明日の朝まで様子を見るか、医科学研究所に行くかと言われ、迷わずこちらにいらしたようだ。
コーギーちゃんは、何にもなかったかのように元気いっぱい。本当に、飲み込んだの?
レントゲンを撮ったが何も映らず、CTで確認しますと
言われていた。あらあら、大変な事になっちゃった・・・。本人(犬?)はケロッとしていた。

そんな様子を見たり聞いたりしているうちに
「どうぞ」と呼ばれた。
奥に入ると、ガラスの向こうに麻酔の効いたアンディーが 口に管を咥えて撮影台の上にひれ伏していた。
撮影がスタート。機械が動き出した。モニターには刻々とアンディーの頭の中の様子が写しだされていた。
あっというまに終了。
「フィルムができたら、またお呼びします」
また、待合室へ。3人が沈黙。だって、次に呼ばれた時は、アンディーの状態は最悪です という宣告を受けるかもしれないのだ。

そして、また「どうぞ」と呼ばれた。
3人で説明を受ける。
「やはり、ありますね・・・。」
アンディーの頭の中には、大きな腫瘍と思われる塊があった。こいつがアンディーを苦しめていた・・・。

         


CT画像から

向って左がわの画像、頭蓋骨がおわかりになると思うが、前を向いたアンディーの頭部を正面からスライスした感じの画像だ。中央右にボヤっとした
塊があるのがわかる。その周りのもやもやしたものは
浮腫と思われる。
その塊がアンディーを苦しめていた。

研究所のK先生がCT画像を指差しながら細かく説明してくれた。その間 私は必死にメモを取るがうまく取れない・・・。
映った影は 血の塊か肉腫か腫瘍かはCTの画像だけでは断定できないので 総じて「腫瘤」と言うそうで
MRIの撮影をすればはっきりするという。
今後の治療としては ステロイド剤、ホルモン剤の投与、放射線治療、などがあること。
この画像を人の脳外科医にも見せてディスカッションして 所見を出してくれること。
最後に「開頭手術を含めて考えられるのなら お手伝いします」というお言葉を頂いた・・・。
「開頭手術」・・・・・・。頭にメスを入れるの・・・・?

CT撮影のための麻酔と造影剤の影響か、アンディーは撮影後、なかなか麻酔から覚めない・・・。このまま覚めないなんて事、あってはならない。麻酔と造影剤のせいなの?
1度、奥の入院室の方からアンディーの鳴き声が聞こえた。生きている!!
完全覚醒をしてからの帰宅を病院側は望んでいたが
そもそもアンディーは 体の調子がよくない。
来院した時点で寝たきりの状態だったので、完全覚醒は できない。
その事を説明して やっと帰宅が許された。

K病院にも連絡を研究所からしてくれることと
これからK病院と私たちで今後のことを相談しながら
医科学研究所とも連絡を取り K病院での治療をしていきましょう というお話をした。

アンディーを3人がかりで車に乗せ 帰途に着いた。
アンディーの状態は 起きてはいるが動けない状態。
不自由な体をなんとかしたくて 時々バタバタとする。

アンディーの症状の原因がはっきりわかった・・・・。望んでいない「原因」だったが、分かった事でなんだかホッとした。たとえそれが「難病」であっても。
4歳という若さでは普通、考えられない「腫瘤」
ネットでいくら検索しても 脳腫瘍という症例は1つも
出てこなかったのに・・・。
なのにどうしてアンディーが、うちのアンディーがこんな事になってしまったんだろう・・・。遺伝?なのだろうか・・・?なってしまったものは 受け入れるしかない。これからアンディーに何をしてあげればいいのだろう・・・・。選択肢はいくらかあるが
それはとてもハードルが高い気がする・・・。
 

その日家に着いたのは午前12時近く。途中でせないちごさんと軽くどこかで一休みとも思ったが、まっすぐ帰ってきた。
翌日、2005年2月6日、午前9時に家を出て K先生の病院に行った。
昨日の報告をするために。
アンディーの状態は変わらず横になったまま。立ち上がっても左旋回をし、ただ歩き回りバランスを崩すとそこにバタンと倒れこむ。ご飯は良く食べお水も飲む。

病院に着いて診察室に入るなり、K先生が
「なんか映ったんだってなぁ・・・、こんな事もあるんだなぁ・・・、俺は何にもないんじゃないかって思ってたけど・・・。」と言った。もう既に医科学研究所から連絡が入っていた。
「獣医学もだんだん人の医学に近づいてきて、俺達も色んな研修を受けて勉強しないとなぁ・・・」とK先生は言った。これからのアンディーの治療について話し合った。脳の腫瘤がなんなのか、はっきりさせるには
MRIの撮影をしなければならない。
でもまた、麻酔をかけ遠くの大学病院にまで連れて行かなければならない。アンディーの体に不安がある以上、なかなか踏み切れない。
今の状態は間違いなく、その腫瘤による脳への圧迫、及び周辺の炎症のせいで神経症状が出ている。
その炎症を抑えるのに、ステロイドの投与を始めようという事になった。副作用もかなり気になったが
今はそんな事を言ってる場合ではない。
とにかくアンディーを元気にしてやりたかった。
MAX34キロの体重が28キロにまで減っていた。食べるものはちゃんと食べているはずなのに・・・。 
ステロイドの注射を打った。プレドニゾロンという
合成副腎皮質ホルモン製剤の投与も始まった。
医科学研究所のK先生とこちらのK先生と話し合った結果の治療だった。原因がわかったお蔭で適切な投薬ができた。

注射を打って家に帰った。しばらくしたらなんだか
アンディーの元気が出てきた。寝たきりだったのに
自分で立ち上がり、2、3時間も部屋を歩き回った。ステロイドのせいだ。体が思うように動くのを楽しんでいるようだった。

午後になり、長男を除く3人と2頭で近くの公園に車で行った。そこの公園はワンがよく集まる公園だった。
午前中、部屋で歩き回る過ぎてお疲れかな?とも思ったが、公園に着いてちょっとしたら、元気に力強く歩き出した!!

やはり、たくさんのワンが来ていた。ピアリスとアンディーに他のワンたちが挨拶に来てくれた。
そこでアンディーが異常な行動をとった。
近づいて来たワンに威嚇をし
歯を剥いた。主人が慌ててアンディーの顔を押さえたらその手を噛みそうになった。こんな事は初めてだった。自分の体の状態が悪い事を本能で感じている証拠なんだろうと思った。可哀想に・・・。

他のワンたちとの接触を避け、公園の池の周りを1周して 公園の隅のところでリードを放してみた。私と主人との間を2度ほど往復し、なんと駆け足までしてみせた!ピアリスに甘えて跳びかかったので 
慌てて止めた。興奮は良くないし頭をあまり揺らすような行動は脳に負担がかかるのでは?と思ったから。
ステロイドの注射1本で こんなに元気になるなんて
信じられなかった。それこそ半日前は 生きているのか判断するのも 呼吸や瞳孔をみたりしていたのに。

家に戻り、ご飯をあげた。バクバクとよく食べ、よく飲んだ。おむつもはずしてあげた。自分でトイレに行けるようになっていた。
ただ、表情はまだパッとしなかった。何となく疲れているような表情。これだけ元気になってくれたから
それだけでいい。

翌日、アンディーは絶好調!ご飯も上手に食べ、トイレもオムツがいらなくなった。ただ、自分のしたウンチをよける事はできなかった。排泄のあと、ベランダを ウロウロと歩き回るのだが、そのときどうしても踏みつけてしまう・・・。あんよがばっちい。
私が仕事に行った後、主人が帰ってきたら 尻尾を振って喜んだと携帯にメールがきた。ちょっとジェラシー!私が家に帰ったら尻尾振ってくれるかな?と急いで帰ったのに、アンディーお寝んね。残念!!

<2005年2月7日の日記より>


アンディーの症状がステロイドで抑えていられるのは
あと、どれくらいなのだろう・・・。
もし、腫瘍の摘出手術をしたら助かるのだろうか・・・。
後遺症はあるの?
私達はアンディーにどこまでしてあげたら 正しい選択と言えるのだろう・・・。
アンディーはどんな最期を迎えるのだろう・・・。





2005年2月8日、アンディーをシャンプーした!!
主人が「大丈夫なのかぁ???」と心配そうに言っていたが、今日のアンディーの状態なら、大丈夫と判断。
お風呂場に行くのを少し嫌がったが、それはいつもの事。
シャワーをかけてゴシゴシ洗った。途中、横座りしてしまい立ってくれなくなった。まぁ、仕方ない。
私はトリマーですから、どうやってでもシャンプーできますから〜!シャンプー後のドライヤーも普通に
かけられた。
ふわふわアンディーの出来上がり〜♪イケメンアンディー復活♪とても3日前まで寝たきりだった子とは思えない★よかったね♪アンディー!

その日の午後、お薬をいただきにK病院に行った。
K先生が「所見がきてるから」と言って1枚の紙を渡された。改めて突きつけられる現実。
   「画像診断報告書」
大脳左側側脳室上方(尾状核)領域に充実性の腫瘤病変が認められます・・・・・。
アンディーの頭の中にある世界で一番憎いもの。
でも、それを切除した方がいいとか、何をしたらよいとか、何も指示されていない。
これは、人の脳外科医も意見をしてくれて出た所見。
手の施しようがないという事なのだろうか・・・。
K先生に「手術とか、放射線治療とかして助かるのですか?」と聞いてみた。
「やってみてもいいが、実際、それがいいとは言い切れない」と言った。
放射線治療には副作用が伴う。そして時間的にも経済的にも その治療ができる病院に週に何度も通うのは困難ではないのか?入院させて放射線治療をする事をこの子は望んでいると思うか?開頭手術しても助かる保障はないんじゃないか?そうなれば最期を看取る事は不可能だ など、長く先生と話し合った。
結局、このままステロイド剤の投与をお願いすることにした・・・・。
そばにいたいし これ以上の苦痛は与えたくないし
入院中に急変してしまったらもう2度と会えない。
これからのおそらく そう長くはないアンディーの命を一緒に過ごしたかった・・・・。
ただ、それだけだった。
薬も何日分かしか K先生は出さない。
いつ、いらなくなるか わからないから・・・・。



        





                      




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